イケ・池井戸 潤

2013年11月 1日 (金)

ようこそ、わが家へ (小学館文庫)

9784094088434

☆☆☆ 著者:池井戸 潤 販売元:小学館 発売日:2013/7/5

内容(「BOOK」データベースより)

真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから窮地へと追い込まれていく。直木賞作家が身近に潜む恐怖を描く文庫オリジナル長編。

日常に潜むブラックホールとでも言うべき悪意。そしてそれに対峙する勇気と家族の結束。サスペンスタッチの事件で幕が開きます。

並行して主人公倉田の勤務先での立場と人間関係、そこから露見する横領疑惑。一家の主として、またサラリーマンとしての苦悩と責務が重く描かれる。

圧倒的な筆力とよく練られたプロットでぐいぐい引き込まれた『空飛ぶタイヤ』『鉄の骨』といった既読作品に比べるともう一つ。

とはいうものの、倉田の社内での奮闘ぶりと女性部下などリアルにイメージし易い描写には好感が持てました。

2011年7月27日 (水)

民王

民王Book民王

著者:池井戸 潤
販売元:ポプラ社
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☆☆☆

内容紹介
企業小説を変革し続けてきた乱歩賞作家・池井戸潤が、ついに政治の世界に踏み込んだ!ある日突然、首相・武藤泰山と、武藤の大学生のドラ息子・翔の中身が入れ替わってしまう。

あれっ、これってSFだったのか(?)冒頭からの衝撃の事件の真相が分かるとそうとしか思えませんが。ま、社会派サイエンス・フィクションということにしておく。

ついこの前のわが国の政権そのものの描写。お約束のスキャンダルなど軽さが目立ちます。男女の入れ替わりが出て来る中盤からは、たちの悪いコントかと思いました。

ま、細かい所にこだわらずに読む本ですね。池井戸さんのシリアスな企業小説には唸らされていたのですが、このテイストの話となるとやはり勝手が違うのでは(?)

どうにかエンディングまで辿り着くと、何となく勇気がわいて希望が持てるという、そんな気にさせられる不思議マジックです。

気にかけていた『下町ロケット』が直木賞を受賞してしまった。こうなると読むのを後回しにしてしまう天の邪鬼なわたしであった。

2011年4月14日 (木)

銀行総務特命

銀行総務特命 (講談社文庫)Book銀行総務特命 (講談社文庫)

著者:池井戸 潤
販売元:講談社
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☆☆☆+

内容(「BOOK」データベースより)
帝都銀行で唯一、不祥事担当の特命を受けている指宿修平。顧客名簿流出、幹部の裏金づくりからストーカー問題まで、醜聞隠蔽のため指宿が奔走する。だが、知りすぎた男は巨大組織のなかで孤立していく。部下になった女性行員、唐木怜が生き残りの鍵を握る―。腐敗する組織をリアルに描いた傑作ミステリー。

『官能銀行』
ベタなタイトルにスキャンダラスな展開で一気に読ませます。指宿の部下になる唐木怜の登場シーンからの絡みに引き込まれる。初めはライバル関係というのがいい。で、事件の方は大体の想像の域を出ませんでした。

『灰の数だけ』
行員の家族を誘拐する事件。怨恨の線から捜査は進み、よくあるパターンの話なのだが、犯人の荒削りなキャラがなんだか迫力に欠ける。そしてここでも唐木の魅力がよく引き出されています。

『特命対特命』
過去の事件を挟んで、人事と総務の特命対決となる訳だが、唐木の元上司がイイ男役で利いています。全編中この話が一番面白かったのだが、ラストで明かされる指宿と協力者との関係が曖昧で分かりにくいのが残念。

『遅延稟議』
会社存続の危機に直面した中小企業社長と融資担当員との駆け引き。刻々と期日が迫る緊迫感が一気に読ませます。こんな話は日常茶飯事でしょうが、あらためて金策の難しさと当てに出来るものなど無いという現実に目覚める思いです。

『ペイオフの罠』
この話だけ指宿は登場しません。なので唐木が主役を張ってます。かつて新人時代に担当した老婆から相談を受け…ペイオフうんぬんという、これまたよくある話ですが、被害者老婆の温かみのあるキャラにしんみりさせられます。

どの話もラストに犯人を追い詰めたり示唆するところで…余韻を残したまま終わる。これはなかなか良いエンディングの形ですね。読み応えありました。全8編収録。

2011年4月 6日 (水)

銀行狐

銀行狐 (講談社文庫)Book銀行狐 (講談社文庫)

著者:池井戸 潤
販売元:講談社
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☆☆☆+

内容(「BOOK」データベースより)
狐と署名された脅迫状が、帝都銀行頭取宛に届けられた。「あほどもへ てんちゅー くだす」。具体的な要求はないが、顧客情報漏洩、系列生保社員の襲撃と犯行はエスカレートする。狐の真意と正体は?(「銀行狐」)。元銀行マンの江戸川乱歩賞作家ならではの緻密でスリリングな表題作ほか、5編収録の短編集。

いきなり金庫室に死体が出現したり、窓口での現金支払いミス、はたまた口座を間違えて振り込んでしまうなど、いやはや呆れながら読むもこれが実際に起きてるんだなあ(←金庫室の死体は除く)と、そのリアリティあふれるタッチに圧倒されました。

が、期待していた表題作の『銀行狐』では、いかにも小賢しいといった「ミステリ性」ありきの展開とやりとりに、少なからずがっかりさせられました。小細工多過ぎでストーリー自体を必要以上に分かりにくくしていますね。

と、息つく間もなく最終話の『ローンカウンター』では、胸のすくようなトリック(←現在もこのシステムだと非常に拙いのでは…)に感心する事になりました。この話だけ警察の捜査陣側から描かれていたので、それまでの流れから違和感を覚えましたが、銀行員とのやりとり以降の描写は見事という他ない展開でした。

で『銀行狐』の不祥事担当の指宿がそのまま主役を張る続編に期待しながら、今回の各話で堪能出来た切れ味の良さを味わいつつ、何とも表現しがたい余韻に浸るのでありました…。

2011年3月17日 (木)

不祥事

不祥事 (講談社文庫)Book不祥事 (講談社文庫)

著者:池井戸 潤
販売元:講談社
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☆☆☆

内容(「BOOK」データベースより)
トラブルを抱える支店を訪問し、指導し、解決する部署に異動になった花咲舞は、驚異の事務処理能力を持つ女子行員。特殊な習慣と歪曲したモラルに管理されたメガバンクに対し、歯に衣着せぬ発言力と、相手を張り飛ばす行動力で、彼女は組織に立ち向かう。新ヒロインが大活躍する、痛快銀行ミステリー誕生。

いじめによるリストラの要因が描かれた『激戦区』は、ベテラン女子行員の意地が不祥事の元になっているという、実際にありそうな事件でした。

最後のオチにニヤリとさせられる『荒磯の子』。これはタイトルありきで作られたストーリーでは(?)と思う。何だかコントのオチみたいな気がしないでもない。

自殺に追い込まれた行員の怨念か…ワンシーンだけ登場する舞だが、その迫力と存在感には鬼気迫るものがあり、本編での主人公の児玉に一目置かせる『彼岸花』。

そんな粒ぞろいの短編が全8編。メガバンクの舞台裏を描いた小説は数あれど、ここまで部署内の事情をあからさまに描いたものはなかったですね。

そんな社会派企業小説の名手である著者ですが、やはり『空飛ぶタイヤ』『鉄の骨』といった長編でこそ、その厚みのあるプロットが堪能出来るかと思います。

2011年1月24日 (月)

鉄の骨

鉄の骨Book鉄の骨

著者:池井戸 潤
販売元:講談社
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☆☆☆☆

内容(「BOOK」データベースより)
「次の地下鉄工事、何としても取って来い」でも談合って犯罪ですよね?謎の日本的システムの中で奔走する、若きゼネコンマン平太の行末は―。

ゼネコンの若手社員である平太の人事異動に伴い、業界を揺るがす事件への導入部となります。ワクワクドキドキ感が初っぱなから味わえますね。

颯爽と登場する尾形常務がカッコいいです。出来る中高年の見本みたいだ。自らは決して手を汚さないキャラかと思っていましたが…。あと、フィクサーの三橋は、もっとダーティなイメージでも良かったのでは。

一寸気になったのが、新宿南口から高島屋への移動ルートについての描写が、地理経路の不自然さとなっています。WINSへの動線でガードをくぐる描写になったのかも知れませんが、普通に地上横滑りで高島屋へIN出来ます。

平太の彼女、萌の二股シチュエーションっていうのは、リアル恋愛でもよくある話でしょうな。その萌の迷いをふっ切ったのが、いけすかない男の母親というのがなんとも皮肉だな。しかし、ここいらの描写は読んでいて清々しさがあった。

で、本筋の事件に近い部分として、この小説で描かれているマネーロンダリングの手法としての見事さには、思わず唸らされました。いや、実際に検察の挙げた事件としてあったのかも。その辺は各自お調べ下さい。

終盤に来て談合の中味も、各社駆け引きが入り乱れフィクサーのウルトラCが飛び出し、ようやく決着をみる。かに見えたが、入札当日とんでもないドンデン返しが用意されていて…。この辺に著者の非凡さを見ました。

率直に、ああ面白かったと言える読後感でしたね。

2009年10月15日 (木)

空飛ぶタイヤ

空飛ぶタイヤBook空飛ぶタイヤ

著者:池井戸 潤
販売元:実業之日本社
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☆☆☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
トレーラーの走行中に外れたタイヤは凶器と化し、通りがかりの母子を襲った。タイヤが飛んだ原因は「整備不良」なのか、それとも…。自動車会社、銀行、警察、週刊誌記者、被害者の家族…事故に関わった人それぞれの思惑と苦悩。そして「容疑者」と目された運送会社の社長が、家族・仲間とともにたったひとつの事故の真相に迫る、果てなき試練と格闘の数か月。


軽るぅ〜く妄想を掻き立てるタイトルとは裏腹に、運送会社の母子死傷事件と自動車メーカーのリコール隠しという重いストーリー展開だ。こういうのって被害者と加害者のそれぞれの家族の描かれ方に胸が痛む思いですね。どちらの立場になってみてもです。


事件の裏側にある巨大企業の人のあり方とエゴと欲望。経済小説としての側面が浮き出て来る。なるほどと思ったのは、財閥系企業の強みと弱みについての説明が的を射ているな。これ正に◯菱、三◯、◯友のことだと判りますね。


主人公の赤松社長の前に次から次へと試練が立ち塞がる。なんかゲームのステージを一つずつクリアしていくみたいな感じ。被害者家族への謝罪やメーカーとの訴訟などと並行して、子どもの学校での事件や赤松自身が会長であるPTAの騒動が勃発する。


しかし、警察がリコール隠しの真相解明するも逮捕に至るまであと一歩の決め手がなく、じりじりする焦燥感はこちらにも伝わって来ました。まさに手に汗にぎる攻防と言いますか、そこいらの警察小説よりも捜査に対するリアリティがありますね。


そして終盤へ向かい、雲の切れ間から青空が覗くようにじわじわと爽快感が味わえます。489Pで二段組み。読み応え充分なシリアス社会派ドラマとして、久しぶりに感動を味わえた作品でした。

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