黒百合
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著者:多島 斗志之 |
☆☆☆+
幻想的とも思える六甲の高原の雰囲気。草花や池やロープウェイ跡地にもひんやりとした夏の空気を感じる描写が心地好い。わたしも子どもの頃、何度か登った六甲山だが別荘やホテルに泊ったことはなかった。
ひとりの女の子をふたりの男の子が感心を惹こうとする。うん。昔あったな。
池で泳いだり、小道を散策したり、双眼鏡で絶景を眺めたりと、高原ならではの小さな冒険の楽しさが伝わってくる。こんなロケーションの中でそんなひと時を味わえるなんて、羨望の眼差しで見ていたに違いない。十四歳のわたしだったら。
「黒百合」って、そうかあの人のことだったのか(!?)
女の子「香」を取り巻く人たちの様子から彼女の境遇が焙り出される。そこにかしづかんばかりの男の子ふたり。微笑ましくもあり鬱陶しくもありといった具合でしょうか。それにしても都会の喧騒から離れた地での絵空事のようだ。
交互に出てくるパートは十七年くらいのタイムラグがあり、わかり辛かったので登場人物の相関図をつくってみた。よく練られているなというか、この辺にも人物トリックの要素があるんだなと感心する。ベルリンでのパートが効いていますね。
なもんで思わず読了までに時間がかかってしまった。この居心地の好さから抜け出したくないという思いがそうさせたのかも。などと格好つけてみました。
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