ヤマ・山本甲士

2010年4月22日 (木)

ひなた弁当

ひなた弁当Bookひなた弁当

著者:山本 甲士
販売元:中央公論新社
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☆☆☆+

内容(「BOOK」データベースより)
芦溝良郎は、社内野球大会で常務の頭部へ投球を当ててしまった翌日、二十七年間勤めた「王崎ホーム」からリストラを宣告されてしまう。そして出向先として斡旋された人材派遣会社では、仕事をするどころか自分が派遣社員として登録される始末。妻からは、隣近所や娘の手前出勤しているふりをするように命じられる。そんなある日、絶望する四十九歳無職の男に、一つのアイディアが…。

うん。ほっこりとした気分に浸れる話ですね。それも中高年の、平たく言ってしまえば応援歌的な。淡々としたストーリー進行に、自分も時間軸を合わせてしまったかのような気がした。この著者の本にはいつもうっかり引き込まれてしまうのだ。

で、リストラから新たな自己実現に至るお父さんの話なのだが、よく考えるとこれは運のいい男の話だとも言えますねえ。そうだ、気付くか気付かないかで人生のチャンスをやり過ごしてしまうんだろうな大半の人が…。

そしてやる気と活気を取り戻したお父さんの家庭内の立場にも、微妙な変化が訪れるのです。妻や娘との距離が詰って来たりして、これはこれでリアリティがあるな。天然鰻のかけら入りの「ひなた弁当」。はて、どんな味がするんだろう(!?)。

2009年11月29日 (日)

ぱちもん

ぱちもん (小学館文庫)Bookぱちもん (小学館文庫)

著者:山本甲士
販売元:小学館
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☆☆☆

内容(「BOOK」データベースより)
探偵という職業には、どこか胡散臭さが漂う。本書は、そんな怪しげなイメージを地でいく、調査費水増し請求、調査結果捏造なんて当たり前な“ぱちもん探偵”たちのあきれた行状を暴露する、ブラック系連作短篇集。探偵業で得たノウハウを駆使してさまざまな悪事を計画する「受けた恩義は」、探偵として一本立ちするという野望を抱いた男のトホホな顛末を描いた「カネのにおい」ほか全六編を収載。


如何にも小悪党っぽい表紙イラストの男。こんな探偵、実在してそうだなとイメージが膨らみましたね。そこへもって来ての関西弁で展開するストーリーに余計に「ぱちもん度」もヒートアップします。何となく勢いで読む本なのかなと思う。

で【ぱちもん】(名)偽物、まがいもの。そのまんま探偵業の胡散臭さをさしていますねぇ。実際、この本を読んで調査費の水増し請求や結果のねつ造は当たり前といった具合で描かれるプロの手口の数々。とても探偵の厄介にはなりたくないと思いました。

連作とそうでない話が六編続きます。で、良かったと思ったのが『この悔しさ』という話。何の事はないちょっと気になる女性が出て来るストーリーなんですが、やさぐれた所もリアルに描かれていて、とくに関西人のハート鷲掴みではないかと。

2009年11月14日 (土)

とげ

とげBookとげ

著者:山本 甲士
販売元:小学館
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☆☆☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
巨大ワニの化石が発見されて一躍全国区となった南海市。市民相談室主査・倉永晴之のイライラは募るばかり。上司は不祥事で逮捕されるわ、妻は交通事故を起こすわ、小さな肩に降りかかるトラブルはとどまるところを知らない。そんな折、市長に酒席で絡まれ、晴之は暴行騒動にまきこまれる。ああ、今日も悲しき地方公務員。

まだ半分、いや三分の一も読まないうちから事件と騒動の連続で、どーっと疲れの来る読み応え感です。これまでのシリーズ『どろ』と『かび』に比べて、よりリアリティのある小市民のイタい日常が描かれています。この役所の市民相談室の面々は絶対モデルがいるなと踏みました。と言うくらいのリアルキャラ(!)


で、主人公である係長のおっさんが切れ気味になると台詞がどんどんエスカレートして来る。この毒舌がまた痛快なんですね(!)読んでるこっちのストレスを晴らしてくれる勢いですホント。市長をハメる姑息な手段を取ったかと思うと、確信犯的に好感度アップを図り目的を達成するなどその執念たるや見上げたものだ。


そしてストーリーは思いがけない展開に。こういった形で市民が政治へ参加していくパターンというのもアリなんだな。いや、既にどこかで同じようなことが会った筈。簡潔にまとめられたラストですが、それまでのドロドロした経緯が嘘のような清々しい読後感でしたね。あそうそう、表紙の魚ってじつは・・・。

2009年11月 3日 (火)

かび

かび (小学館文庫)Bookかび (小学館文庫)

著者:山本 甲士
販売元:小学館
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☆☆☆+


内容(「BOOK」データベースより)
幼稚園の送り迎えでの些細なトラブル、ねちっこく繰り返される姑のいやみ、ウェイトレスの尊大な態度…。日日の怒りを呑み込んで、波風を立てずに生きてきた主婦・友希江。しかし勤務中に脳梗塞で倒れた夫を退職に追い込もうとする会社のやり口に、ついにキレた!主婦一人、地元の大企業相手に、手段を選ばぬ報復を開始!誰にでもある日常の不満から、嫌がらせの応酬や不法侵入などなど、しつこくえげつない闘争へと突入していく様は、あまりにリアル。人間誰しもが孕む狂気を、緻密に描き出す「巻き込まれ型小説」の傑作、ついに文庫化。


いきなり子どもの送り迎えに際しての出来事にいら立つ主婦。この静かに感情が高揚して来る入り方が絶妙です。で、主人が勤務中に倒れ入院。労災申請や復帰後の扱いなど大企業側のエゴと圧力がのしかかる。それに対峙する主婦のメンタル面での変貌が、もろストーリーの面白さに反映されています。


この主人公の主婦の心情を思うとおおむね共感出来るのだが、だんだん反撃手段がエスカレートしていき同時に自分が強くなったという錯覚に陥る。このあたりから、人の不幸や災難をほくそ笑む嫌な女へと脱皮していく。でも不快感はそれほどないな。小さい娘とのやりとりがクッションになっているからか。にしてもこの場面場面のスイッチングとスピード感に読書欲をそそられましたわ。


しかし、悪事(主人公側の)に綻びが生じるのはお約束というか、ある意味ホッとする結末かな。以前読んだ『どろ』では、憎しみがエスカレートした末のやり過ぎの結末に呆然としたものだが、今回はぎりぎりの所で踏みとどまったみたいですね。ちなみにタイトルも思いっきり取って付けたというものです(表紙イラスト理解出来ん!)。


2009年9月 5日 (土)

わらの人

わらの人Bookわらの人

著者:山本 甲士
販売元:文藝春秋
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☆☆☆


内容(「MARC」データベースより)
初めて入った理容店。ついウトウトしているうちに、髪形はすごいことに! そのせいで、いつしか性格まで変わっていき、とんでもない出来事が…。髪形の変化が巻き起こす、愉快、痛快、爽快な「事件」を描く連作短編集。


全六話からなる短編集で最初と最後の地味で大人しいOLが変貌を遂げて行く話がとくに面白かった。ほんとゲラゲラ腹をかかえて笑えましたね。それぞれの友だちの女の子もいい味出していました。


あと、記憶喪失の男のヤクザチックな話や小学生の女の子が主人公でファンタジックな話もあります。全ての話に同じフレーズの台詞で出てくるのが散髪屋の女主人です。必殺のマッサージでウトウトさせて一気にカット・・・てな具合でしょうか。


攻撃的な髪型になった人ばかりみたいだが、逆に大人しい髪型で内向的になったりするパターンも見てみたかったな。しかし、鏡の中の変身した自分を見た時のリアクションはみんな同じ様子でちと詰らなかった気もする。


で、読んでみて思ったこと。この散髪屋の女主人のヘアスタイルはどんなだろう(?)ということ。ちょっと触れているところもあるので確かめてみてください。


2009年9月 1日 (火)

どろ

どろ (小学館文庫)Bookどろ (小学館文庫)

著者:山本 甲士
販売元:小学館
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☆☆☆


内容(「MARC」データベースより)
市役所に勤務する岩室とペット葬儀社で働く手原は、日々の生活に不満を抱える隣人同士だが、些細な出来事からお互いに始めた嫌がらせが次第にエスカレートし、職場や家族を巻き込む「戦争」となってしまう。


小市民の日常におけるささいないざこざ。そんなことから話は広がっていく。しかし、やってる事と言えばまるで小中学生のケンカと同レベルな悪戯。途中まで出来の悪いコントを見ているような錯覚さえ覚えました。


終わりなきバトルを繰り広げる当事者二人ですが、仕事してる時よりも仕返しに燃えてる時の方が生き生きとしているなあ。実際、現実に似たような事件とかあっても集中力というかエネルギーの注ぎ方が違うんだろうな。


『どろ』とは、そんな泥試合を見せられる話だった訳です・・・アイタタ。


ま、気持ちのいい話でないことだけは確か。いかにして相手にダメージを与えるかに主眼が置かれたストーリーで、しかもそれは「嫌がらせ」という形。なので別段ドラマチックな盛り上がりや胸を打つ感動シーンとかは無縁な、うだつの上がらぬ小市民のストレス発散ドラマです。


ラストのオチにしても何となく先が読めたし、安直にまとめたというのが判るな。この著者の初読した作品の世界がとても気に入っていたのだが、今回のはまるっきり違うテイストで別物でした。

2009年8月25日 (火)

ひろいもの

ひろいものBookひろいもの

著者:山本 甲士
販売元:小学館
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☆☆☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
バッグ、サングラス、警察手帳、ハンドグリップ、腕時計。何かを拾うことで転回する彼女たちと彼らの運命の物語。巻き込まれ型小説の名手が描く、心にすとんと落ちる珠玉のハートウォーム・ストーリー。


「もの」を介して人と人の繋がりを描いた爽やかな物語です。前のパートの主人公がさり気なく次の話の中にポジションを得ているあたり微笑ましいですね。それもイメージとして出て来たり、本人が次の話に堂々とキャスティングされていたりと、これがバトンリレーの如く全編につづきます。


『セカンドバッグ』

うんうん。確かにあるよねこういう話。小心者のバイトくんの成長物語ってそのまんまな話です。ここで扱われているバッグは贅沢品そのものですね。で、ひと捻りあって、ラストのこういう何かのはじまりを予感させる時のぎこちなさ。なんか照れるなあ。


『サングラス』

これは読んでてちょっとオカルトっぽいなと。身構えながらでしたね途中まで。でも、ここでの「ひろいもの」自体があるメッセージを発していると分かってからは応援したくなったり、その境遇に感傷的になったりで。涙腺が緩むラストでした。


『バッヂ』

タイトルからピンバッジを想像しましたがなんと◯◯◯◯のことでした。で、この話だけは「ひろいもの」した主人公自身がちゃらんぽらんな所もあり、落とし主の事を考えるとあまりに都合良くまとめたエンディングではと思います。


『ハンドグリップ』

この引きこもりの主人公の変貌具合には驚かされたというか笑った。マッチョになった体よりメンタル面でここまで強気になれるのかな(?)なんて勘ぐり過ぎましたかね。分かりやす過ぎるくらい直球勝負なストーリーでしたが後味はいいですね。


『ウオッチ』

女友達の会話のやりとりで大半が占められる。その内ひとりの弟が話題に出るのだが、それが何とビックリな・・・ネタバレ厳禁。一寸したサプライズだった。亡き彼への想いをつのらせる主人公にはいいかげん辟易したと思っていたら、これも劇的なラストにしてやられました。


「ひろいもの」とは何だったのか。それを拾った事によって変わってしまった五つの人生。ここでは全ていい方に転んだケースですね。全編とも話のどこかでリンクしているのですが、多少やり過ぎかな(?)巻頭にある「思いが込められた道具は、ときに人を導く」という言葉、読後に沁みました。

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