ミタ・三田 完

2013年3月17日 (日)

モーニングサービス

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☆☆☆☆ 著者:三田 完 販売元:新潮社 発売日:2012/1/20

内容説明

浅草の観音裏、昭和の香りを色濃く残す喫茶店。美味いコーヒーと亭主の人柄に惹かれ、今日もまた、風変わりな客がやってくる。心温もる人情連作集。

舞台となる浅草の喫茶「カサブランカ」、もうこの店の外観や雰囲気が目に浮かぶようでした。如何にも訳ありの人たちが集まりそうな様子が(笑)

そしてその話のどれもが実にリアリティ溢れるもの。単にありふれた事件だからか、はたまたどこかで聞いたことのある話なのか、まぁ引き込まれますね。

面白いなと思ったのが、とくに魅力的なキャラではないのだが、「あ、いるいるこんな人!」といった具合の常連客の面々。

全編に漂うこのしっとりとした空気。浅草だからでしょうか、といって常連客は関西や東北から上京した人たちもいるのだが。まぁ、いい感じです。

理不尽な事にも抗うことなく受け入れる強さ、その反面情に流されて自分を見失う弱さ。様々なエピソードが色を変えて連作短編として見えて来ます。

2012年8月22日 (水)

黄金街

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☆☆☆+ 著者:三田 完 販売元:講談社 発売日:2012/4/18

内容(「BOOK」データベースより)
生きるとは巡り逢うこと。不器用で、孤独で、そこはかとない。でも、必ず寄り添う誰かがいる―「人情の名手」が綴る切なくも温かい珠玉の六篇。じんわりと心に響く、珠玉の短編集。

あまりにもストレートな『黄金街』という街。意外と気づきませんでした。流しのおやじが唄う胸に沁みる曲。これは著者の選曲の勝利ですな。

『パタパタ小父さん』は昭和の芸能界の舞台裏を覗かせてくれる話。著者の名作『マリちゃん』を彷彿させる如何わしく物悲しい雰囲気が楽しめた。

タイトルがいきなり洒落になっている『通夜噺』はなかなか奥の深い話。こういうのを「粋」と言わずして何をそう言うのだろう。

ま、腹巻きに書かれている「悲しくてやりきれない人生に、喝采を」というコピーは、一寸気取り過ぎた感がなきにしもあらず。全6編。


2011年9月 5日 (月)

草の花 俳風三麗花

草の花―俳風三麗花Book草の花―俳風三麗花

著者:三田 完
販売元:文藝春秋
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☆☆☆☆

内容(「BOOK」データベースより)
満洲国皇帝の御前で句会が開かれた!?新進の科学者と結婚するも流産し、失意の日々を送るちゑ。女子医専を卒業し大連の病院へ赴任する壽子。六代目尾上菊五郎の妾となった浅草芸者の松太郎。戦争という激流のなかを、凛々しく生きる三人の女たち。

わたしの最も好きな文体を紡ぐ作家、三田さんの新刊。今回は前作から一段スケールアップして満州国へと舞台を移します。戦争へと向かう激動の時代に身を投じて行く「三麗花」たちの運命や如何に(!)。

魅力的なキャラが居るというのが面白い小説の一条件とするなら、「男装の麗人」川島芳子の登場によりそれは一気に満たされました。そして皇帝溥儀、甘粕正彦、はては永井荷風までもが登場するという豪華キャストです。

例によって俳句の塩梅を楽しみながら、ずっとこの時空に浸っていたいという気になる趣きですね。「三麗花」たちの身の上にも、悲喜こもごもなドラマが刻まれて行く。良質の小説というのは予想を裏切らぬ余韻を楽しめるという事だと思う。

2009年9月19日 (土)

マリちゃん

マリちゃんBookマリちゃん

著者:三田 完
販売元:幻冬舎
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☆☆☆+


内容(「BOOK」データベースより)
「わたし、歌手になってお金を稼ぎます。早く家を出られるように」時は70年代、音楽プロデューサー、芸能プロ社長、ドラマ演出家、芸能記者…。暗い眸をした少女は、男たちの手によってトップアイドルに祭り上げられる。しかし、“禁断の愛”をきっかけに、その人生はねじ曲がり、芸能界から忽然と姿を消す。残された男たちの胸に広がる茫漠たる想い。マリちゃんの「真実」はどこにあったのか―?成長し続ける東京の街、活力に満ちた芸能界、欲望と希望の狭間で揺れる男たちを活写した、感動長篇。

70年代アイドルというテーマの物語。タイトルはやはりあの伝説のアイドルから戴いたようですね。最初は回りの業界人たちからストーリーに入っていくという手法で、芸能界の仕組みみたいなものが何となくわかる。


誰それがモデルだなというのを推察してみる。脚本家に司会者に芸能プロ社長に・・・こういう楽しみがあるんですねこの手の小説には。マリちゃんがデビューからトップアイドルになるまでのプロセスは業界の王道まっしぐらです。


会議中の事務所に乗り込んだマリちゃん。社長に迫るシーンには鬼気迫るものがあるが・・・実際こんな風に壊れていったのかなあ真理ちゃんも。それと韓国オーディションで見いだした美人歌手の件はもっと進展があるかと期待したが・・・。


1975年からいきなり2009年に話がとぶ。結構大胆なワープですな。


とゆうかここから番外編みたいな展開になる。そしてマリちゃんのアンビリバボー(!)な現実がわかってくる。いや〜あ辛いなこれは・・・という気分。ほんとの意味での「汚れ役」だし。しかしこのパートで登場の不動産屋が体験する「何という贅沢」には大いに同感する。


そしてワープした30数年の間にマリちゃんが体験して来た事と、また新たな事件が。かつてマネージャーとマリちゃんがレッスンしていたあるもの。エンディングでこんな効果的に使われるとは・・・ぐっと来ましたこれには。


・・・ふと「水色の恋」のイントロが聴こえて来た読後でした。

2009年4月28日 (火)

当マイクロフォン

当マイクロフォンBook当マイクロフォン

著者:三田 完
販売元:角川グループパブリッシング
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☆☆☆+


内容(「BOOK」データベースより)
業と因果に翻弄されて、地方局を流転した。熊本、鹿児島、旭川、富山、名古屋、東京、大阪。その声と語りは、全国の聴衆を魅了した。母を恋い、激情に身を明け渡し、芸の鬼となった男、中西龍の魂に安住の地はあるのか―。伝説のアナウンサー中西龍の生涯。俳風評伝小説。


著者がNHKのOBだからこそ実現した、ノンフィクション風物語なのだろう、きっと。
結構際どい裏話なんか出て来たりするが、時効なんだろな。


その独特の名調子で読み上げられるリスナーからの便りを通じて、こんなにも愛されていたんだなと多少驚いた。


とにかくマメな人だったんだな、聴取者にも芸者さんにも。


破天荒な新人局アナ時代からと、NHK退職後フリーとして活躍するパートが交互に描かれる。
そのスイッチングの妙というか、ここぞというタイミングで話が入れ替る。


しかし、よく女を撲る男だな当マイクロフォンは。そこは嫌な奴。


時代の潮流に乗って放送業界で名を馳せた、身勝手な男の生涯といった話です。大雑把なところ。
そして、女性読者の共感を得るのは難しいだろうな・・・多分。

2009年3月29日 (日)

絵子

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著者:三田 完
販売元:文藝春秋


☆☆☆+


内容(「BOOK」データベースより)
東京は下町、隅田川のほとり浜町に未亡人の母と暮らす絵子。バツイチでちょっとファザコンなヒロインを軽妙に描く、オール読物新人賞作家のフレッシュなデビュー作。


志ん生をこよなく愛する絵子。でも母親のことはそれほど愛してないのか。


絵子が時折自分で入れる合いの手(殿、たくらみは首尾よく進んでおりまする・・とか)が可笑しい。これが上手いタイミングで飛び出すもんだなあ。


それにしても老ホームレスさんのあの秘技はぜひ会得したいが無理だろな。


個人の属するコミュニティの大切さと他人への思いやり。Fマイナーさんの葬式の件ではしみじみとそう感じ入りました。


あの傑作『俳風三麗花』でも絶妙な隠し味となった間のとり方が上手い著者。


途中から話は絵子の「扉の鍵」探しになる。これはむつみごとでイクためのコツを得ること。
で、ことの顛末は読者にゆだねてカラッとした終焉がいい。


この小説とおんなじ匂いをもつ小川 糸著『喋々喃々』。その主人公の栞より若く碎けている絵子の取っ付きやすさが、醸し出す情緒の微妙な違いになっている。


せっかくの上村一夫の表紙イラストだが雰囲気はずしたかな。

2009年2月 9日 (月)

暗闇坂

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著者:三田 完
販売元:文藝春秋


☆☆+


内容(「BOOK」データベースより)
心を病む妻に献身的に尽くす俳優の夫。ピアノ調律師の木島は仕事をきっかけに二人の不可思議な夫婦生活に巻き込まれ、吹き荒れる情念の嵐に翻弄されていく。


ピアノの調律師である木島は古い名器の調律依頼を受ける。依頼主は往年のロカビリー歌手で俳優の七条。やがて、その妻彩美と三人での奇妙な付き合いがはじまる。


俳優夫婦の過去と秘密がフラッシュバックされ、物語の伏線として何かキーワードがあるのかと留意して読むのですが、さにあらず単に回想シーンにとどまっています。彩美と木島の大人の秘め事については予想どおりの展開になっていきました。


彩美の目線で語られるパートがいくつか挿入され、木島の思考、行動をせせら笑うかのように深層心理がうかがえ、芝居がかったミステリアスな生活ぶりが解明されていきます。やがて木島自身の家庭にも暗雲が。妻との関係も不協和音を唱え、彩美が壊れていくさまと歩調を合わせるように終焉を迎えます。


この著者の長編ははじめて読みましたが、それまで読んだ短編(連作も)で感じた三田マジックともいえる「魔法」をこの本に感じることは出来ませんでした。

乾杯屋

乾杯屋Book乾杯屋

著者:三田 完
販売元:文藝春秋
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☆☆☆+


内容(「BOOK」データベースより)
退職金をはたき、業界のパーティーで乾杯の音頭をとる権利を買った芸能記者の運命は?表題作ほか、巨匠と大女優との壮絶な確執(「授業」)や、死者の体を清める湯潅を仕事とする元風俗嬢(「メイクアップ」)など、現代の奇譚とも呼ぶべき物語全六篇。


六つの短編からなる現代の奇譚!?とありますが、昨今の社会情勢、現実の事件を顧みますと、時代がフィクション(小説)を追い越していると感じました。


『乾杯屋』

テレビ番組でもありそうなストーリーで、「乾杯の音頭取りの権利」を買った芸能記者にふりかかる運命は・・・。


『授業』

江の電の「極楽寺」駅のある土地で家庭教師についた大学院生。生徒は80歳になる老人。往年の名作映画のフィルムに隠されたエピドードが綴られ・・・。


『匂鳥』

不良女子高生とおじいさんの出会い。同居生活の中で傷ついたウグイスの手当をするおじいさんの真意は・・・。


他、『女王の食卓』『節目ノート』『メイクアップ』の全六編の短編集です。わたしは『授業』『匂鳥』『メイクアップ』の三作が気に入りました。


中でも『メイクアップ』は、特殊な職業(メイクアップアーティストではありません)に身を置いた女性の話で、自身のこれまでの生を顧みるいい機会となりました。この作品のキーワードとなる秋海棠の花が「報せる」という不思議な空気が心地良く、近年読んだ短編の中でも気に留まる作品となりました。

俳風三麗花

俳風三麗花Book俳風三麗花

著者:三田 完
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

☆☆☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
昭和七年、東京は日暮里の暮愁先生の句会に妙齢の娘たちが加わった。大学教授の娘ちゑ、女子医学生の壽子、浅草芸者の松太郎、三人の恋路は山あり谷あり…三者三様の恋模様本邦初の句会小説。


昭和初期、次なる時代の激動への予感のする時代。句会という優雅でのどかな会合が物語の中心となることから、登場人物の仕草や佇まいなどにも品格があり、現代ではすっかり失われてしまった社交のマナーを享受出来ます。


タイトルにある「三麗花」となる、ちゑ、壽子、松太郎の三人娘。まさに、句会の華ではあるが、決して出しゃばる場面はなく、会の雰囲気に和んでいます。俳句をメインテーマに打ち出した小説を読むのは勿論はじめてのこと。著者も次から次へと句をひねり出すのに苦心されたのではと、そっちの意味でも感心してしまいます。


わたしは地方から上京して医学を学んでいる、壽子の物怖じせず実直な気質に憧れを抱きました。また、彼女がふと見せる、江戸っ子である他の二人への嫉妬心も上手く表現されています。三人の娘たちが出会う一話目の、「とら、とら、とら」が興味津々の呈で、じっくりと情景描写を味わいながら読めました。


短編五編からなりますが、それぞれの中で読まれる句を楽しめ、各エピソードと照らし合わせ、これと思うキーワードに留意して再読すると、また新たな感動を得ることが出来ました。


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