2012年2月 1日 (水)

北帰行

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☆☆☆+ 著者:佐々木譲 販売元:角川書店 発売日:2010/1/29

内容紹介
六本木界隈で組長狙撃事件が発生した。現場から立ち去ったのはロシア系の女と日本人の男。その行方を執拗に追う暴力団、警視庁組織犯罪対策部。東京、新潟、稚内。東日本をまたにかけた緊迫の逃亡劇、戦慄のラスト!

ロシア人女性を空港からアテンドするオープニングは、乾いた空気の中に華やかなイメージが湧く。行き先がディズニーリゾートのホテルなので尚更カラフルに(!)

スリリングでスピーディーな展開は、まさに主人公巻き込まれ型のクライムノベルの真骨頂(!)こういうセミプロ的なロシア人女ヒットマンは実在しそうだ。それにクールなキャラが惹き付けますね。

一方、相棒となってしまった、まったくもってのカタギの旅行アテンド業者。しかし意外なタフさを見せて、ヤクザ&マフィアたちと互角以上に渡り合う頼もしさ。

裏をかく逃亡ルートと更に深読みする追っ手との攻防戦。エンディングに向かっての加速はロマンスあり、バイオレンスありでぐいぐい引き込まれます。

がしかし、もはやお約束とも言える予想通りの終焉が、チラチラと透けて見えていた気がするな。う〜む、ちと惜しいです。

2012年1月19日 (木)

SROIV - 黒い羊

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☆☆☆ 著者:富樫倫太郎 販売元:中央公論新社 発売日:2011/12/20

内容紹介
SROに初めての協力要請が届く。自らの家族四人を殺害して医療少年院に収容され、六年後に退院した少年が北海道で行方不明になったというのだが――シリーズ第四弾、書き下ろし長篇。

サブタイトルの「黒い羊」というのが、ハリーこと針谷刑事の心の闇を示唆しているのか。今回は思わぬところから攻撃されて、ちと気の毒な役回り。

にしても、タブロイド紙の女性記者の感じ悪さは異常だなあ。犯罪者以外で久々に嫌悪感を覚えるキャラに出会えた。

そういえば、昨年読んだ『エチュード』でも、人物成りすましが焦点になっていたが、これ最近のトレンドなのか(?)小説だから成立する話でもあるんだろうな。

今回は犯人の独白のパートが二章もあって、はっきりこの手の展開は苦手なんですよねわたし。そこだけ流し読みモードで切り抜けました(笑)

新九郎の変人ぶりと麗子のダメージの深さが伺えたほか、とくにメンバーにも変化はなし。次回から坊屋ちゃんも加わるのか(?)気を持たせますね。

で、肝心の近藤房子がほんのチョイ見せ程度の顔出し。本格的に絡んで来る嵐の前の静けさのよう。また、読み終えた途端に次が待ち遠しくなるのだ。


2012年1月 7日 (土)

トーキョー・バビロン

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☆☆☆+ 著者:馳星周 販売元:双葉社 発売日:2006/4

内容(「MARC」データベースより)
ブラック・マネーを掻っ攫え! 若くして「人生の敗者」となった3人が仕掛ける起死回生の大勝負。汚い仕事に手を染める消費者金融から、金を強請ろうと画策する若者たちを描く。裏切り、暴力、計略。圧巻の暗黒小説。

今から5、6年前の話なのだろうが、当時の時代背景がそのまま甦るほど、上手くストーリーとキャストに取り入れている。

ITバブルが弾けて、時代の寵児たちの凋落ぶりや消費者金融の不祥事。経済ヤクザこと企業舎弟の実態などにその辺の事情が伺えます。

かつて、著者のキメフレーズだった「騙せ、欺け、丸め込め」という言葉通りの駆け引きは復活したものの、話が長過ぎた。

折角のスリリングな展開で盛り上がって来ても、フラッシュバックやスイッチングが入り乱れ、逆に間延びしている場面もあるし(笑)

それでも気を抜かせずに読ませるというあたりは流石ですね。所どころに地雷が埋め込まれてる緊張感か。しかし女はしたたかで強いです。


2011年12月25日 (日)

2011 心に残った本ランキング

☆★2011 心に残った本ランキング☆★

1.家族トランプ/明野照葉
2.我が家の問題/奥田英朗
3.草の花 俳風三麗花/三田完
4.県庁おもてなし課/有川浩
5.転迷 隠蔽捜査4/今野敏
6.SRO3 キラークィーン/富樫倫太郎
7.鉄の骨/池井戸潤
8.ハードラック/薬丸岳
9.警官の条件/佐々木譲
10.佳代のキッチン/原宏一

以上が今年読んだ小説で印象に残った本です。
大体のところは当ブログの☆印評価も反映されています。

さらにベスト20までのランキングはこちらで紹介しています。
↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓
http://book.akahoshitakuya.com/u/21131/cat


2011年12月22日 (木)

11 eleven

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☆☆☆ 著者:津原泰水 販売元:河出書房新社 発売日:2011/6/16

内容紹介
業界を震撼させた『綺譚集』から7年、津原泰水が贈る、待望にして究極の作品集がついに刊行。著者ベスト短篇との声も上がっている「五色の舟」を筆頭に、「11」の異界の扉が開かれる。

読後まず実感したことは、はっきりとした喪失感。ただそれは在るべきものに対してではなく、間違いなく享受出来るであろうという期待に対してのそれだ。

同系統の既出作品として『綺譚集』が宝石のような煌めきのある言葉で紡がれた傑作であったことから、自ずと同等いやそれ以上の恍惚感をもたらしてくれると確信していた。

それでも『五色の舟』『琥珀みがき』『キリノ』『クラーケン』『テルミン嬢』といったところは好きな話ではあった。

多くは冒頭からそのディテールは認識すれど、繰り返され重ねられる理論武装した乱雑な言葉によって読書意欲を半減させられたことも確か。


2011年12月15日 (木)

仮借なき明日 (集英社文庫)

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☆☆☆+ 著者:佐々木譲 販売元:集英社 発売日:改訂新版 2010/4/20

内容説明
直木賞作家の傑作ハードボイルド
メーカー企画室勤務の原田は、常務に海外工場の監査を命じられる。そこは、ギャングと汚職警官がはびこる街だった。悪を追いつめ、狩りたてる男を描く傑作ハードボイルド!

監査役の「堅気に見えない」サラリーマン亮平がフィリピンの現地工場へ乗り込む。いきなりヤクザ者にカモにされる件など、冒険小説のノリも全開です(!)

現地の権力者に警察にならず者とお約束通りのキャスティング。予想通り三つ巴の抗戦になるのか(?)エッジの利いた駆け引きが如何にも東南アジアですね。

人事について対立する亮平と支配人。二人のやりとりを聞いていると、どうも支配人の言い分に肩入れしたくなるな。

こういう小さな山場が幾つもある展開はスリリングで小気味いい。舞台がフィリピンという政情の不安定な国でのゆる〜い緊張感も盛り上げます。

あと謎といえば冒頭に登場してキーマンになると思われた優子なるボランティア学生。途中から消えてしまった。久々の人物消失トリックか(笑)

かれこれ20年近く前の作品なのだが、当時これを読んでいればさらに疾走感を間近に享受出来たと思う。バブル時代の余韻なのか海外進出企業を舞台にしたりスケール感のある作品に恵まれていた頃ですね。


2011年12月10日 (土)

一匹羊

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☆☆☆ 著者:山本幸久 販売元:光文社 発売日:2011/10/20

内容(「BOOK」データベースより)
縫製工場に勤める大神は、若いころと違って事なかれ主義で働いていた。そこに、職場体験に中学生がやって来る。年下の同僚とともに、中学生の面倒を見るはめになった大神。そこで、ある問題が生じて―(「一匹羊」)。OL、女子高生、フリーター、元野球選手、主婦…相手にされなくても。変人に思われても。それぞれの「明日が少し元気になれる」物語。

毎度の事ながらほっこりさせられる話が詰まっています。しかしそのほっこり具合が小さくなって来ているような。読み慣れてしまったせいなのか(?)いやきっとそうに違いない。そんなこんなの全8編。

深夜バスでの女同士の会話のやりとりが絶妙な『狼なんてこわくない』は、巻頭を飾るに相応しい爽やかな印象が残ります。以下の話でも女同士、男同士、そして男女の絡みというタイプ分けが出来、それなりに味わいの変化が楽しめます。

父と息子のぎこちない交流が新鮮な『夜中に柴漬け』。バイト先の居酒屋が居心地のいい場所みたいだ。『感じてサンバ』はとうが立った姐さんキャバ嬢がいい仕事しています。こういう地方の島では如何にもありがちなエピソード。

著者の得意分野でもある「職場もの」の『一匹羊』は感情移入しやすい話でした。欲をいえば気になる部下とのラブコメモードが欲しかったところか(笑)少し元気がもらえる読後感はいつも通りです。


2011年12月 6日 (火)

廃墟に乞う

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☆☆☆ 著者:佐々木 譲 販売元:文藝春秋 発売日:2009/7/15

内容(「BOOK」データベースより)
13年前に札幌で起きた娼婦殺害事件と、同じ手口で風俗嬢が殺された。心の痛手を癒すため休職中の仙道は、犯人の故郷である北海道の旧炭鉱町へ向かう。犯人と捜査員、二人の傷ついた心が響きあう、そのとき…。感激、感動の連作小説集。

職場復帰を目指す道警の警部補の再生物語。しかしそんな堅苦しさはなく、療養に来た湯治場でのんびりくつろぐ様子など紀行ものを読んでいる錯覚に陥る。わけないか(笑)そんな刑事のオフの日常を追う。

道内での色んな地域性を活かしたロケーションは素晴らしいが、それが事件そのものに深く関わるという程の必然性もない。行く先々でかつての先輩や同僚に再会しながらのストーリー展開。決して重たくならないのがいい。

最後の章では休職の原因となった当時の事件状況が明かされるが、元はといえば自業自得ではないか。刑事として如何に鈍感であったかが振り返られる。逆にリアリティを感じましたね。

これまで読んだ著者の作品群からすれば物足りないのも確か。抒情的な描写で事件に表情を与えているのでしょうが、あえて直木賞というなら別の著作が相応しい。ま、時期と作品のタイミングもあるけれど。全6編。


2011年11月29日 (火)

特捜検察―雷鳥ファイル

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☆☆☆ 著者:姉小路 祐 販売元:徳間書店 発売日:2001/10/31

内容(「MARC」データベースより)
検事長の女性スキャンダル事件を発端とする一連の事件に関わった新人検事。検察組織の古い体質に抗いながら真相に迫るが、そこに待っていたものは自分の知られざる過去とも関わることだった…。

新任検事の成長物語的なストーリーとして読み進む。この検事の世間知らずさというか、鈍臭さはちょっとしたものだ。読んでいてイライラする場面も多々(笑)なので最初はシリアスな小説として捉えづらかった事も確か。

ある交通事故の不審点から、地元フィクサー周辺の汚職事件へと疑惑は広がっていく。どう見てもこの新米くんには荷が重過ぎですな。あ、でも家族の過去にまでフィードバックする展開はよく出来た話でした。

脇キャラである指導役の検事や事務官、そして新米くんに絡む検察審査員の女性。どれも顔が見えないというかぼんやりしたイメージに終始する。例によって残りページで解決するのかと気を揉むも、あっという間に纏まりました(笑)


2011年11月26日 (土)

エチュード

エチュードBookエチュード

著者:今野 敏
販売元:中央公論新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

☆☆☆+

内容(「BOOK」データベースより)
渋谷・新宿で相次いで発生した無差別殺傷事件。警察は衆人環視のなか、別人を現行犯逮捕するという失態を繰り返してしまう―。警視庁捜査一課・碓氷弘一は警察庁心理調査官・藤森紗英を相棒に事件の真相に迫る。

この40代後半で警部補なりたての碓氷が出しゃばり過ぎない主役に徹していて、人いきれでごった返す捜査本部でも話が見えやすかったです。相棒となる心理調査官の紗英とは一悶着あっても良さそうだが。

いや、そこは別の嫌味キャラの刑事がなるほど「いい仕事」をしていました。卑屈な態度が上手く出ているという意味で(笑)で、プロファイリングの分析説明なんかが分かり易いというか、こんなんでいいのか(!)という簡潔さ。

そこいら辺をカバーして余有るのが、この各署合同の捜査本部での人間関係の妙でしょうか。碓氷の家庭内で父親としてのポジションなどサイドストーリー的に顔を出し、ある意味こっちの方がリアルに受け止められた。

しかし連続通り魔殺人というショッキングな事件の行方としては、あっさりまとまり過ぎた気もするのだが。心理調査官vs犯人の「読み合戦」がエスカレートした挙げ句、机上の計算通りに都合良く事が進んだ感じです。ちょい惜しいなぁ。


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