2016年5月16日 (月)

ハサミ男 (講談社文庫)

9784062735223

☆☆☆☆ 著者:殊能将之 販売元:講談社 発売日:2002/8/9

内容(「BOOK」データベースより)

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作。

まず最初の叙述トリックには早い段階からそれとなく分かっていました。にしてもなかなか唸らされるプロットには興味が尽きません。

全体に「おおらか」な空気感が漂うので緊迫した殺傷シーンでも何処か演劇を見ているようだ。美人だけれども太っているという微妙な印象に何故かそそられる「あの人」。

その形跡を小出しにしながらまた見事にトリックを仕掛けるという手の混みよう。ですが何となくそんな気がしていました。

まあ、あの結末には多少なりとも驚かされ、かつ笑えましたが。こういうやっつけ方もありなんですね近年のミステリにおいては。

久々に一気読みしてなかなか爽快な読後感を味わえました。

2016年4月 3日 (日)

女性外交官・ロシア特命担当 SARA

9784344028883_2

☆☆☆ 著者:麻生  販売元:幻冬舎 発売日:2016/2/10

内容(「BOOK」データベースより)

ロシア・ウラジオストクで外交官の夫が突然、姿を消した。同じく外交官である妻・雪村紗羅(SARA)は、単身現地に乗り込み、必死に夫を捜し続けるが、いくつもの謎に行く手を阻まれ。次第に、「銀色の闇」に隠された大いなる陰謀に巻き込まれていく日本とロシア、中国、そして北朝鮮。綿密な取材に基いて、国家の思惑と外交官の本質を暴く!書き下ろし傑作インテリジェンス・ミステリー。

やたらとカタカナ用語が出てくる。気取ったビジネス単語、そのまま日本語で表記しても指して支障はないのではと。

極寒のロシアに居るはずが、いつの間にか成田の搭乗ゲートになっている。場面設定のスイッチの切り替えが制御不能、もしくはこちらの理解不足か。

海外小説を読んでいるような空気感というか、まぁ人物も外国人が多いので当然といえば当然。決して嫌いではないです。こういった映像をイメージさせるような語り口とか。

エピローグになってようやく小さな感動のシーンが訪れる。こんな規律ある組織が敬意を表する場面は「臭い」演出と思いサラリと流し読みする筈がやはり揺さぶられました。

2015年7月13日 (月)

マトリガール (ポプラ文庫)

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☆☆☆ 著者:藤村美千穂 販売元:ポプラ社 発売日:2014/12/5

内容(「BOOK」データベースより)

津森美月は、薬物中毒の男に襲われた経験から、麻薬取締官、通称「マトリ」の道を志す。あるパーティーで友人の彼氏が薬物使用の疑いがあると直感した美月は、単独捜査に乗り出すが、事態は思わぬ展開を迎えることに期待の俊英が描く、新感覚クライム・ノベルの誕生!

冒頭のパーティーでの賑わいや、女性主人公の立ち位置などが分かるまで、綺麗な映像が目に浮かぶようで2時間ワイド劇場によくある話かと。

双子の姉にはじまり、憧れの刑事やマトリの同僚捜査官など、何かと気にかかるキャストたち。本筋と平行して挟み込まれる、とあるOLの堕落ストーリー。

事件の全体像が明らかになるにつれ、そこかしこの登場人物に疑いの目を向けてしまう。この心地よい疑心暗鬼は何だろう。

ラストで判明するこの古典的トリック。しかし一寸したサプライズ感はありました。

がしかし、なんか残念な「犯人」というか、えっ?これでいいの?と思ってしまうのも確か。

パートごとの仕掛けなど面白い試みがあった反面、どこか稚拙な文脈だったり。そんな初読みの著者への印象です。

2015年6月 6日 (土)

美貌帖

9784309275581

☆☆☆+ 著者:金子國義 販売元:河出書房新社 発売日:2015/2/4

内容(「BOOK」データベースより)

絢爛たる美貌の軌跡!絵画、デザイン、舞台、着物、料理、文学、映画、音楽、バレエその美意識の出自をすべて綴った初の自伝、ついに刊行!55枚の自選アルバム収録。

序章の『部屋の中』よりあの憧れの私邸の各部屋やアトリエについて、そこを彩る小物たち(絵画は勿論、写真立て、ぬいぐるみ、雑誌、ストンドランプ、他)が詳細に記される。

蔵書であるカラーグラビア『L’Elegance』のページを捲りながら、それらを照らし合わせ確認する楽しみ。「55枚の自選アルバム収録」として初めて目にするスナップ写真もありました。

金子先生の華々しくも古風かつ前衛的なバイオグラフィー。これまで見聞のなかったエピソードなどなかなか興味深い件にニヤリとしたり、感心したりと楽しめました。

表紙カバーの絵と本体表紙のモノクロ写真が同じ構図でリンクしているという贅沢な装丁。フォントの色使いも洒落ています。近年少なくなった凝った装丁。

そういえば移転する以前の『紅蝙蝠』に足を運ばなかった事が悔やまれる。写真や映像で目にする「そこにしかない」という「京の粋」が香るその佇まい。

さて次の休日あたり、神田の『美術倶楽部ひぐらし』に足を運ぼう。先生を偲んで。

2015年5月16日 (土)

撃てない警官 (新潮文庫)

9784101301525_2

☆☆☆ 著者:安東能明 販売元:新潮社 発売日:2013/5/27

内容(「BOOK」データベースより)

総監へのレクチャー中、部下の拳銃自殺を知った。柴崎令司は三十代ながら警部であり、警視庁総務部で係長を務めつつ、さらなる出世を望んでいた。だが不祥事の責任を負い、綾瀬署に左遷される。捜査経験のない彼の眼前に現れる様々な事件。泥にまみれながらも柴崎は本庁への復帰を虎視眈々と狙っていた。日本推理作家協会賞受賞作「随監」収録、あなたの胸を揺さぶる警察小説集。

なかなか皮肉交じりのタイトル作品『撃てない警官』に見る恨みつらみ。そんな執念の画策が悲劇を生んでしまう。とんだとばっちりを被る柴崎警部。で、ここからが始まりですね。

若い看守が疑われる『第3室12号の囁き』では警察組織の隠蔽体質を暗示して終える。愚かな部下に対する柴崎の腹立たしさがひしひしと伝わって来ました。

何でも二字略語に縮めてしまうのが警察組織の仕来りか。『随監』でも警官による隠蔽工作が行われている。街の世話焼き担当のようなベテラン警官が味のあるキャラです。

かつて私がハマった「横山秀夫」の警察小説短編作品をなぞっていたような読後感。事件性や登場人物や小道具にまで至るディテールの繊細さにおいては比べるまでもありませんが。

2015年4月 4日 (土)

房子という女 - SRO episode0

9784120045967_2

☆☆☆+ 著者:富樫倫太郎 販売元:中央公論新社 発売日:2014/3/24

内容(「BOOK」データベースより)

最愛の姉の死が、シリアルキラーの狂気を呼び覚ました。SROを翻弄する最凶の殺人鬼・近藤房子。その戦慄の半生を語り始めるSROが炙り出したモンスターの知られざる過去が明らかに!シリーズ最新刊。

キラークィーン房子の語り口はまったくもって読者を惹き付けるなぁ。自身の内面感情を話すのがとても上手いですね。

今回楽しみにしていたのは、前作に登場した山根室長の「彼女か?」と目される例の女性についてです。静かに予感させる怪しさプンプンのキャラでしたがさしたる進展は伺えず。

そんな事すら忘れさせるほどの幼少期からの房子のモンスターぶりには唖然というより納得。まぁシリアルキラーの本質とはまるで歯を磨くかの如く殺人を重ねていくという事の確認でした。

そして後半部分から一郎との出会い。あのひ弱な印象しかなかった旦那が若かりし頃はこんな奴だったのかと。グロさと変態度合いでいえば房子を凌駕しているかも。若い女性をいたぶる手腕にかけてですが。

SROの面子の活躍ぶりがどうにも印象薄いなぁ。これは読後時間が経っているからしょうがないか。なんか房子のファンブック的な要素満載でアッという間に読み終えていた。

そして一年近く感想も書かずに放置しておりました次第です・・・。

2015年3月14日 (土)

インデックス

9784334929770

☆☆☆ 著者:誉田哲也 販売元:光文社 発売日:2014/11/14

内容(「BOOK」データベースより)

池袋署強行犯捜査係担当係長・姫川玲子。所轄に異動したことで、扱う事件の幅は拡がった。行方不明の暴力団関係者。巧妙に正体を隠す詐欺犯。売春疑惑。路上での刺殺事件。終わることのない事件捜査の日々のなか、玲子は、本部復帰のチャンスを掴む。気になるのは、あの頃の仲間たちのうち、誰を引っ張り上げられるのか

池袋署で奮闘する玲子の地道な捜査が緊張感を煽る『アンダーカヴァー』ですが、ラストのオチには軽い衝撃を受けました。「ずっこける」と言う意味で。

『彼女のいたカフェ』の舞台となる大型書店とその中にあるカフェはよく利用します。この本の中でも「ほっこり」する話で玲子が警察官として歩み始める以前の様子が伺えます。

玲子と因縁のあの井岡の迷コンビぶりが見られる『インデックス』。理路整然とした推理が展開され地味ながらよく出来た話でした。

『夢の中』『闇の色』は連作となるストーリー。姫川班の再編に向けての根回しをはじめ、現在集められた新メンバーとの距離感と駆け引き、何やら二転三転しそうな姫川班の補充人事。

上層部の意向が働くのは仕方ないと思っていたら、最強人事権を発動するのは他ならぬ著者でありました。そしておおよその見当はついていたサプライズ。

2015年2月26日 (木)

ナオミとカナコ

9784344026728

☆☆☆+ 著者:奥田英朗 販売元:幻冬舎 発売日:2014/11/11

内容(「BOOK」データベースより)

ナオミとカナコの祈りにも似た決断に、やがて読者も二人の共犯者になる。望まない職場で憂鬱な日々を送るOLの直美。夫の酷い暴力に耐える専業主婦の加奈子。三十歳を目前にして、受け入れがたい現実に追いつめられた二人が下した究極の選択。「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」復讐か、サバイバルか、自己実現か。前代未聞の殺人劇が、今、動き始める。比類なき奥田ワールド全開!

帰って来たクライム・ノベルの奥田ワールド!今回は二人の女性が主人公となるのだが、かつての脇役・敵役にみられた「生理的にも嫌悪感を覚える」というような人物はいない。

ストーリー自体はすでにネタバレしているのだが、究極の選択ミッションを遂行するまでと、そこから完全犯罪成立なるかというスリリングな展開を楽しむ趣向でしょうか。

「ナオミの章」と「カナコの章」と進んでいくのだが、ストーリー上その時点で精神的に強い方の名前が冠されています。計画遂行前のナオミの強気と遂行後のカナコの精神力アップという具合。

いよいよ警察が動き出す終盤、二人のとった行動は。そして真相究明に執拗に絡んでくる(まぁ当然ですが)カナコの義妹の存在!ラストの一行まで果たして二人はどうなるのかと引っぱります。

自分が共犯の一味となって一緒に逃げている感というのは、やはり「女性読者」限定で響くものなのでしょうか。

表紙イラストどちらがナオミでどちらがカナコだろうか。カバーを外すとその答えが分かった。

2015年2月20日 (金)

その女アレックス (文春文庫)

9784167901967

☆☆☆ 著者:ピエール・ルメートル 翻訳:橘 明美 販売元:文藝春秋 発売日:2014/9/2

内容(「BOOK」データベースより)

おまえが死ぬのを見たい男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るがしかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。

第一部で誘拐されたアレックスは果たして無事に脱出出来るのか?犯人トラリューの得体の知れなさにも興味を惹かれとりわけネズミとの攻防には予断を許さないものがあります。やがてアレックスが目論んだアイデアに感心。

第二部に入ると被害者である筈のアレックスの正体が徐々に露わになって来る。この辺りから読者を欺くテクニック、予想していた展開を見事に裏切っていく様は読み応え十分。そして怨念を込めたトリックが披露される第三部へ・・・。

過去にアレックスに降りかかった災難にしても事の壮絶さに突っ込みどころも多々ありました。そしてカミーユ刑事とその仲間たちのキャラもなかなか楽しめました。

実に久々の翻訳もの(ブログ初掲載!)でしたが、ありがちな過剰な状況描写や小道具などのオーバーリアリティが思いの他少なく、その点は好印象。で、これはミステリーというより一種の「サイコスリラー」作品を傍観していたという読後感ですかね。

DONAさんのブログから興味を持ち手に取るまで、結構話題になっていた作品とはつゆ知らずでした()


2015年2月15日 (日)

ラスト・ワルツ

9784041021378

☆☆☆+ 著者:柳 公司 販売元:角川書店 発売日:2015/1/16

内容(「BOOK」データベースより)

疾走する特急車内、仮面舞踏会、ドイツの映画撮影所加速する頭脳戦、ついに最高潮へ!世界各国で展開する究極の騙し合いに生き残れ。日本最高峰のスパイ・ミステリ。

スパイなら当然の所作であろうがやはり読むたびに新鮮さを覚える神経質なほどの用心深さ。

いきなりスリリングな予感をさせる『アジア・エクスプレス』での列車内劇。

ソ連のスパイ機関「スメルシュ」の名が出てくる。かの007シリーズでおなじみの対スパイ殺人機関。「黒い衣装」というのが引っかかると思ったら重要なキーワードとなっていました。

あばずれ娘は貴族の子息。そして彼女の危機を救った若き軍人。いつかの再会を約束して別れる。まるで古いメロドラマそのものの展開。豪華絢爛で華やかなる『舞踏会の夜』に酔いしれる。

そんな「あの人」を思慮する顕子の心情。そして我らが結城大佐の影と彼が果たした役割とは・・・。ああ、全てが粋でスタイリッシュな空間描写の中の出来事!

最後の中編『ワルキューレ』の中に出てくる「国家が文化に関わるとろくな結果にならない」というスパイ雪村の吐いた言葉はこの現代でも生きている。

映画『ジョーカー・ゲーム』の宣伝をバンバン垂れ流している時期を見越した上で「映画の中のスパイ」とは違うという、ある意味映画版を茶化した台詞なんぞグッと来ましたね。

終盤のどんでん返しに至っては最早、著者による「名人芸」の世界というべきなのか・・・。

«逃走 (講談社文庫)

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